イワンへの回答
ドストエフスキーの小説「カラマーゾフの兄弟」の中で、イワンは、罪のない少女の涙に同情して、神の創造を否定する。イワンの判断に共鳴する人も多いだろうと思う。しかし、真実はどうなのだろうか。イワンは神の声を聞いたのである。それは、あの「罪のない少女」のために、何事かをせよ、という声であったろう。しかし、イワンは、その声に従わなかった。その言い訳が、あの神の創造への批判となったのだ。神の声を聞いて服従しなかったという点では、預言者ヨナと同様であり、両者にはどこか類似の点もあるに違いない。では、イワンの立ち直りは、どのようにして可能なのだろうか。原点に戻ること、あの「罪のない少女」のために何事かをなすということである。大きなことでなくともよい、小さなことでよい。その時、イワンは信仰から信仰に進むであろう。イワンは根っからの無神論者ではないのである。彼は神を知っている。ただ、服従しなかっただけである。その理由は、彼がとうとうと述べている理由ではない。それは不服従を決断したあとに、考えられた理由である。なぜ、彼は神の声に従わなかったのか。それは、まだ分からない。
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