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2006年1月27日 (金)

アウグスチヌス

ローマ・カトリック教会では、以前、アウグスチヌスよりもトマス・アクィナスの方が重視されていた。その理由も、中世思想家たちによって説明されていた。しかし、日本では、アウグスチヌスの方が関係書籍は多く、その研究も盛んである。そして、教会間の一致の探求がされている現在、その関心は保持されなければいけないと思う。
 プロテスタントがアウグスチヌスを信仰の根拠とするのは、その恩恵論であり、理解できる。特に挙げられるのは、ペラギウス論争である。アウグスチヌスとの論争の中で、我々に与えられている、彼のイメージは、人間が自力で救いに到達できるとする功績主義者である。ペラギウスは、418年のカルタゴ教会会議で排斥され、その後の西方教会では異端的神学者と見なされてきた。しかし、これは西方教会でのことで、このアウグスチヌスの原罪論と恩恵論とは東方教会では継承されていない。
 東方教会では、アウグスチヌスの評価というものは、西方ほどに高くはない。かえって、教会分裂のきっかけであったことが意識されている。ニカイア・コンスタンチノープル信条の受け入れに関しては、当初は教会に分裂はなかった。しかし、その後、西方教会の中で、アウグスチヌスの「三位一体論」が広く読まれるようになり、その中で、聖霊の発出が「父と子から」と言われ始め、いつの間にか、ニカイア・コンスタンチノープル信条の「変更」が行われたのである。従って、東方教会としては、アウグスチヌスは、東西の教会分裂のきっかけを作った原因と見られている。
 同時に、西方教会の中では、宗教改革の原因としても、アウグスチヌスが登場している。
彼は、カトリック教会の聖人であるのだが、ルターはアウグスチヌス会の隠修士会会員であったし、カルヴァンにおいても、アウグスチヌスは常に権威の所在として引用されている。
 こう考えてくると、アウグスチヌスはカトリック、正教会そしてプロテスタント教会の三者において、実に深いかかわりを持っているのが分かる。自分の信仰の置き所に関して、こんなにも評価の分かれる人物はキリスト教会史上、他にいないのではないであろうか。アウグスチヌス研究は教会一致のための理解を深めるだろうと思う。

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コメント

トマス・アクィナスについては、いろいろと本が出ていますが、世界の名著『トマス・アクィナス』(責任編集・山田晶、中央公論社)が特に参考になりました。特に注を読んで教えられました。トマスが「神学大全」で、異論、反論などに対して、感情的にならず丁寧に対応しているところに教えられました。この方法は今でも有効と思いました。

投稿: | 2006年1月27日 (金) 17時32分

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