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2006年7月 8日 (土)

中野孝次展

『清貧の思想』の著者、故中野孝次氏の展示が6月10日から7月30日まで、県立神奈川近代文学館で開催中である。テーマ「今ここに生きる」は、故人の展示にふさわしい最適に言葉と思う。「今ここ」は、実存思想の原点であり、「生きる」は、中野氏の生涯のテーマであったからだ。

「生活を極限まで簡素化し、心のゆたかさと精神の自由を求めた日本人の系譜を古典に即してたどる日本文化論」という説明が、『清貧の思想』に付されていた。西行・兼好・芭蕉・良寛が、とりあげられている。どちらかというと、西洋的教養に親しんできた私は、この本の取り上げた人物に、余り親しみを感じてこなかった。しかし、読んだ。心に深く残るものを感じた。著者のほかの本も読んでみた。自分が強く出ている、あるいは出すぎているかも知れないとも思った。しかし、これほどまで、人生を真摯に問う作家は得がたいのではないだろうか。

『清貧の思想』には物質至上主義への痛烈な批判があり、時代にマッチした本であったのだろう。今、経済は回復してきているというが、再び、物質至上主義への道を歩むとしたら、われわれは、この本の輝きを葬ることになるのであろう。

中野氏の業績は、「今ここに生きる」のテーマをめぐって、揺れはなかったように思う。充実した、実り多い人生であったように思う。同じような作家が出て欲しいとも思う。

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