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2006年8月27日 (日)

寅さんの過去たち

朝日新聞(平成8年1月17日、朝刊)に、映画「男はつらいよ」の監督、山田洋次氏が、寅さんの故郷・柴又を訪ねた記事が載っています。そこで、山田監督は 、こういう感想を述べています。
   
「ヨーロッパの落ち着いた古い街へ行けば、日本人はだれだって、自分の故郷の変わりようが恥ずかしくなるはずです。僕たちの国は経済成長のために、美しい景色、習慣、人情、文化を捨ててしまった。もう捨てるなって、寅さんは懸命に言ってきた気がします」
   
ヨーロッパの落ち着いた古い街、そこでは、時間は、もっとゆっくり流れているのでしょう。人々は、分秒で生活を送るのではなくて、自然との、また過去たちとの対話の中で、ゆっくりと暮らしているのでしょう。その生活は、現代日本のそれと比べて、きっと精神的にははるかに豊かなものであろうと思います。日本は今、確かに大切なものを失いつつあります。
   
今は、どことなく騒々しい街になってしまったと、山田監督が言う柴又ですが、かつては、どんな所だったのでしょうか。
   
「第一作のころ、都心とは別の時間が流れていました。人通りは少なく、店は暇そうで。ほどほどに食っていければいい、といった穏やかさが、旅先でつらい思いをした寅さんがフッと帰ってきて、憩いの時を持つにふさわしいと思ったんです」
   
「ほどほどに食っていければいい」。なんという、うらやましい言葉でしょうか。こんな気持ちを取り戻して、物質的な成長を抑制して、もう一度、「人間にとって本当の幸せとは何か」を考えても、よいのではないでしょうか。
   
人は時間の中に生きています。こればかりは、どうしようもありません。流れていく時間、古いものは、もう、どこを探しても見つかりません。ただ、思い出として、人の記憶の中にあるばかりです。
   
こんな思い出を大切にしたいと思います。そして、過去、我々が生きてきた、いろいろな価値というものが、今も生かされていくようにしたいと思います。
   
過去を振り返らないのも、一つの生き方でしょう。しかし、過去と対話し、過去を現在に呼び戻す努力も、また大切なのではないでしょうか。

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