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2007年6月22日 (金)

映画「シベリア物語」

昔、ソ連映画「シベリア物語」を見たことがありました。戦争から帰った一音楽家の人生を描いたもので、ロシアの自然が美しく、ひどく感動しました。日本の言葉で言えば、人情もまた感動的であったということでしょうか。ロシア民謡に、それはよく現れています。

映画「シベリア物語」は、大衆と共に歌う中から生まれ出て来た芸術家の姿を、厳しくも雄大なシベリアの自然とそこに訪れた戦後の新しい建設の時代の息吹の中で歌いあげた音楽映画で、戦後ソビエト映画のヒット作と言われています。全編を通じて「バスカル湖のほとり」「シベリアの大地」「流刑人のうた」ほか9曲が歌われています。監督I・プイリエフ、撮影V・パヴロフ、主演V・ドルージニコフ、M・ラドィニナ。ズリナ映画祭グランプリほか。モスフィルム。1947年の作品です。

ラジオ深夜便で、ロシア民謡が流されました。最後の歌が、「バイカル湖のほとり」で、アンカーは、「シベリア物語」という映画にも触れました。この映画のような環境で生きることは、人間にとって最高の幸せである、と今でも思います。

極寒の 地に響く歌 あたたかく
 寒に抗する かのようにして

ロシアという国は、終戦間際の行為によって、日本では悪い印象を持たれているのですが、逆に、その音楽によって、どれだけよい印象を与えているか知れないと思います。悪い印象を越えて余りあるものがあると思います。

作家・五木寛之さんも、ロシアに強い郷愁を感じられたようで、ラジオ深夜便で話されていました。

五木さん ロシア語学科 専攻す
 その理由には 共感覚ゆ

愛憎の アンビバレンス 不思議なり
 ロシアの心 ベ氏が解明

思想犯 過酷な処置に 耐えながら
 地下室描く ド氏の筆力

シベリアの 音楽映画 忘れない
 あの明るさは 世紀を超えて

(注・五木さんとは作家の五木寛之氏で、早稲田大学文学部ロシア語学科で学ばれたとのこと。ベ氏とはベルジャーエフ、ド氏とはドストエフスキーのこと、地下室とは『地下生活者の手記』、音楽映画とは「シベリア物語」のこと)

しかし、分からないことがありました。映画では、最後に、レーニンをたたえ、共産主義社会に希望をつないでいたのですが、民族精神の精華を描いたような、この映画が、どうして唯物主義、無神論の共産主義を賛美しているのか、分かりませんでした。それは時代の要請による「つけたし」部分なのだろうかとも思いました。

シベリアの 映画に見たる 社会主義
 その期待よし 誰も思えど

資本主義 格差を生んで 崩壊す
 マルクス予言 挫折はなぜか

金持ちが 福祉活動 精出して
 想定外の 行動に出て

予想外 無神前提 崩れたり
 勝者の信が 社会救えり

ウ氏は言う 金儲けせよ 金捨てよ
 寄付の心は 信の心ぞ

(注・ウ氏とはウェスレーのこと。「シベリアの 映画」は「シベリア物語」のこと。)

今では、ほとんどマルクスの言葉を聞きません。ソ連の「実験」で、何を学んだのか、それを検証すべきではないでしょうか。

ソ連消え 再生ロシア その民は
 ド氏らの描く あの民なのか

ソ連の消滅を、あのアリス・ハーズ夫人は、どういう思いで迎えたでしょうか。もちろん、夫人は地上の人ではありません。ベトナム戦争反対のために、1965年3月16日、焼身自殺したのが夫人です。82歳でした。

夫人は厳格なクェーカー教徒、平和主義者と言われていました。しかし、晩年、ユニテリアン・ユニバーサリスト教会の一員となったとも言われます。岩波新書『ある平和主義者の思想』(アリス・ハーズ著、芝田進午訳)があります。

訳者はあとがきで、夫人の思想を説明して、こう書いています。

「ともあれ、ハーズ夫人は、ソ連擁護という点でキリスト教徒ないし平和主義者のなかではもっとも急進的な最左翼にぞくしていたといえる。彼女にとっては、地上に「神の国」を実現するとは共産主義者と協力して社会主義を実現することであり、また共産主義者とともに社会主義を実現することは地上に「神の国」を実現することにほかならなかた」(215頁)

ちょうど、その逆の道を選択したのがベルジャーエフでした。今、ロシアの人たちは、ソ連時代をどう回想しているのでしょうか。

ロシアの初代大統領エリツィン氏が死去されました。映像からは教会生活が戻ったようですが、現在のロシアの人たちの我々に対する影響は余り大きいとは言えないでしょう。ドストエフスキーやトルストイ、またベルジャーエフなどの描いたロシアの人たちのイメージはまだ強烈に脳裏に残っているし、映画「シベリア物語」は忘れられないのですが。

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コメント

この映画を紹介しているサイトがありました。

http://byeryoza.com/topic/log2005/sibirist.htm

多くの写真で、懐かしい記憶が甦ってきました。

投稿: | 2009年3月13日 (金) 20時31分

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