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2009年3月18日 (水)

無宗教

『無宗教こそ日本人の宗教である』(島田裕巳著、角川書店、2009年)を面白く読んだ。無教会への言及があるかと思ったが、なかった。また、故岩佐凱実(いわさ・よしざね)氏のエピソードの紹介があるかと思ったが、これもなかった。しかし、岩佐氏のエピソードは、この本の趣旨にぴったりである。ただ、この本には、同じような話が紹介されていた。著者が、山折哲学雄氏から聞いた話だという。

山折氏の友人がカナダに旅行した時のこと、入国に際して、係官から宗教を聞かれて、「無宗教」と答えたところ、係官が入管を拒否したという。そこで、無宗教とは、宗教がないという意味ではなくて、無という宗教がに日本にはあるのだと答えて、それで係官を納得させたというのである。(21頁)

さて、岩佐凱実氏は、元富士銀行頭取で、平成13(2001)年10月14日、95歳の高齢で逝去された。彼は、日露戦争の終わった翌年に東京に生まれたが、当時は、戦争の勝利に世の中がわき立っていたので、凱旋の凱の一字を取って、凱実と名づけられたのだという。東大を出て、1928(昭和3)年、安田銀行(のちの富士銀行)に入行され、のちに、大金融人、国際人になった。富士銀行頭取、同会長、同相談役、また全国銀行協会会長、経済団体連合会副会長、経団連評議員会議長、経済同友会代表幹事を歴任した。日米財界人会議は、岩佐氏の提唱を核にして始まったものだ。1986(昭和61)年には、勲一等旭日大綬章を受賞している。

昭和12年、岩佐氏は、安田銀行の一行員だったが、日本電工(昭和電工の前身)の再建のために同社に送り込まれた。この日本電工は昭和14年に、昭和肥料(経営者は鈴木忠治氏)と合併して昭和電工になるのだが、鈴本忠治氏の令息の一人が鈴木治雄氏。鈴木治雄氏は、無教会の関根正雄氏の影響でキリスト教に関心を持たれ、のちカトリック教会に籍を置かれた。

さて、岩佐氏は、昭和25年9月に、単身、アメリカに渡ったが、その時、入国管理官から、宗教を問われたという。

「宗教は何か、というので、『私は宗教はない』と答えると変な顔をした。そこで、『私はキリスト教徒でも仏教徒でもない。神道でもない。いわんやイスラム教徒でもない。しかし私は宇宙の神を信じている』といったら、管理官は、『わかった。わかった。もうよろしい』と解放してくれた」(『回想八十年-グローバリストの眼』岩佐凱実著、財団法人・日本法制学会刊、95-96頁)。

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コメント

この本は、ことしの1月10日に初版発行で、2月10日には再版発行になっているので、売れているのでしょう。多くの日本人に共感を持って迎えられているということでしょうか。

投稿: | 2009年3月19日 (木) 06時02分

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